「正しいものを正しくつくる」を読んだ感想

正しいものを正しくつくる」という本を読みました。 その感想をつらつらと書いていきます。

誰が読むと良いか

この本を読んで、一番知識を付けられる人は、

アジャイル開発は何となく知っている。仮説検証サイクルも何となく知っている。」

という人かなと思います。
一方で、「アジャイル開発はほとんど知らない」人や、「アジャイル開発はある程度熟知している」人はあまり得られるものが多くないかもしれません。

何が書いてあるか

この本はアジャイル開発と仮説検証サイクル、そしてそれらをどのように組み合わせて実践していくかについて書かれています。
そして、それらについて「広く浅く」書かれている本だなと感じました。

特に、「アジャイル開発と仮説検証サイクルがどのように組み合わさるか」という部分がとても勉強になります。
こうした複数のトピックの扱い方について書かれている本はあまり多くないので、ありがたいですね。

一方で、各トピックについてはそれほど深く掘り下げられていません。
この本ではアジャイル開発としてスクラムが取り上げられていますが、スクラムについて深く知りたいのであれば「スクラムガイド」や「エッセンシャルスクラム」を読んだほうが良いでしょう。
仮説検証サイクルについても、深く知りたいのであれば「リーンスタートアップ」を読んだほうが良さそうに思います。

また、「アジャイルをほとんど知らない」「仮説検証サイクルって何?」といった状態の人も、こちらの本は向かないように感じました。
一応の軽い説明はあるものの、この本では序盤から専門用語がバンバン出てきます。
用語を知らない場合、用語が出るたびに用語の確認を行わないといけなくなるので、あまり内容が入ってこないでしょう。
最初の一冊として読むのであれば、「アジャイルサムライ」「カイゼン・ジャーニー」などを読んだほうが良さそうです。

汎化が少しむずかしい

この本には、「一般的に言われていること」「筆者の主張したいこと」が織り交ぜられています。
なので、この本を解釈する際には、「これは一般的な話だな」「これは筆者のオリジナルな考えだな」というのを分解したほうが良さそうです。

例えば、「スクラム」は他の人に話しても通じますが、「越境」はおそらく他の人には通じません。

「正しい」という言葉の危うさ

私はプロダクト開発において「正しい(right, best)」はなく、あるのは「more better」だけだ、と思ってきましたが、この本を読み、「正しい」という言葉の危うさを再認識しました。

この本では序盤に「プロダクト開発において正解は存在しない」と書かれていますが、「正しいものを作るためには・・・」のような書き方がされ、違和感を覚えます。

「正しいもの」も「正しくつくる」も、環境によって変わります。
ユーザーがほしくないものを作ることが良い場合もあれば、決められたものを作るべき場合もあります。
そういった際には、アジャイル開発も仮説検証サイクルも役に立たなくなるでしょう。

この本を読み終わったあとにAmazonのレビューを読んだりすると、考えさせられます。

この本が、「正しい」という言葉に取り憑かれてしまったことが非常に残念だなと思います。